特別支援教育における引き継ぎの方法

引き継ぎ記事

後任への引き継ぎの重要性

 自分が、今まで行ってきた仕事を次の担当者に引き継ぐことということは、いつかは必ずやってくることです。これは、教育関係にかかわらず、病院や会社などどこの世界でも行われています。病院の看護師さんのように、同じ業務を交代で行う職種などでは、毎日の業務の交代の際に日々行われていることでしょう。

 学校に関して「引き継ぎ」と言えば、ほとんどが、学期末および新学期に行われます。新学期は、職員の異動の時期でもあり、転勤や退職者から直接引き継ぎを受けることが難しい場合があるので、計画的な日程調整が必要です。

 ところで、新学期は、本当に忙しく、全ての事が分刻みで動いているような状態です。そのため、引き継ぎに多くの時間を割くことは難しいでしょう。しかし、私自身の経験から振り返ってみれば、この引き継ぎがうまくされるか否かで、子どもたちへの対応の的確さが大きく違ってきたと思います。

 中には、「先入観で、子どもを見てしまうのであまり情報を入れないでほしい。」といわれる方もいらっしゃいますが、どんなに豊富な知識や技量をもっていても、1年間、もしくは数か月間、子どもと接してきた方の情報は有力であることが多いです。そこは、真摯に教えていただくほうが得策ではないかと思います。もちろん、すべてをそのまま信じましょうと言っている訳ではありません。引き継いだ資料や内容と子どもの様子を照らし合わせて、自分が賛同できる部分のみを取り入れていく必要はあります。

 ともかく、特別支援教育に関しては、その名の通り、その子に特別に支援を行う必要があります。そのため、支援の元になる子どもの実態把握をできるだけ早くしかも的確に行う必要があります。ですから、前任者からの子どもに関する情報は宝といえますし、引き継ぎはとても重要なことだと思います。

業務内容を引き継ぐ場合は加筆訂正可能なデータの形で

 ここからは、引き継ぎ情報の内容について述べてみたいと思います。みなさんの職場では、どのような引き継ぎ方法を取られているでしょうか。引き継ぎマニュアルのようなものが整備されていて、それに従って実施される場合は重要な情報の伝達がスムーズに行われていると思いますが、学校ではそのようになっているところはまだまだ少なく、担当者に任されていることが多いのではないでしょうか。

 私が関係者から聞く範囲でしか分からないので恐縮ですが、前任者から丁寧に引き継ぎを受けているところもあれば、何も前任者から聞いていないところもあるようです。中には業務内容を学校内で理解している者が不在で、前任者の引き継ぎもないので、他校の担当者から業務内容を教えてもらっている場合さえあるようです。(この場合は、もちろん児童に関する引き継ぎも望めません。)

 このようなことが起こらないように、担当者はそれぞれの業務内容を時系列でまとめておくのがいいでしょう。4月は何をして、5月に提出する書類は何で、どんな出張が何月と何月にあって、など年度内の業務内容を見渡せるようにしておきましょう。これは、紙面で用意するのと同時にデータとしても共有して、担当者が変わってもデータを手直ししながら引き継いでいけると、急な担当者交代のような事態が起こっても、誰も何も分からなというような事態はさけられるでしょう。

児童の実態を引き継ぐ場合の資料の作り方

 さて、次に児童の実態を引き継ぐ場合についてですが、こちらも口頭だけではなく、資料を用意して臨みましょう。引き継ぎの形式が無い場合は、思いついたことをメモする程度でかまいません。何か資料があると、説明をする側も、説明を聞く側も情報が整理されます。ただ忙しい時期に行うことになると思いますので、あまり資料作りに時間をかけ過ぎないようにしましょう。完璧をめざすと、逆に何もしないということになりがちです。

 下に通級指導教室での引き継ぎ資料を例に挙げています。項目としては、学年、性別、氏名、診断名、特異な点(強み)、苦手な点(課題点)、今までの活動・学習内容、などが入っているといいでしょう。学級全体の引き継ぎの場合は、すべての子どもたちを分析することは不可能だと思いますが、それでも口頭だけではなく、資料を用意したほうが、わかりやすいと思います。

学年性別氏名  診断名得意なところ・強み苦手なところ・課題点活動・学習内容その他
〇〇〇〇ADHD 発達性協調運動障害同時処理 計算眼球運動 手先の器用性ビジョントレーニング 簡単な切り絵得意な学習と苦手な教材の組み合わせを工夫
△△△△ASD算数 ボードゲーム  目と手の協応 人間関係  キャッチボールなどの運動 点つなぎ 間違い探し  ゲームなどで、人間関係の構築をはかる。
(表)通級指導教室の引き継ぎ資料例

 先日、私自身も後任に引き継ぎを行いました。この時の資料を作成していて、子どもの普段の実態把握(アセスメント)がいかに大事であることに今更ながら気づきました。なかなか子どもと接しながらのメモは残しにくいですが、それでも書き留めていくことで、自分の実践を振り返る事ができ、それが効果的であったかなかったかがわかります。そうすることで、より深い実態把握ができるようになり、自身ののスキルアップにもつながるのではないでしょうか。そして、この日々のメモが引き継ぎ資料の基になることで、より有意義な情報として後任に伝えることができると思います。

引き継ぎを受ける側の心構え

 さて、引き継ぎを受ける側について述べましょう。引き継ぎを受ける側は、その内容を精査する必要があります。アセスメントには、2種類あり、客観的な情報と主観的な印象があります。客観的な情報とは、心理検査など根拠あるものが代表的なものです。それに対して主観的な印象とは、子どもを接しているときの個人の教師の見立ての一部です。これら2つの情報が混在した形で示されることが多いのです、引き継ぎを受ける側は、2つを整理する必要があるのです。

 2つの情報の内、主観的情報については頼りすぎてしまわないようにしましょう。なぜなら、その情報は前任者の思い込みで、事実ではないかもしれないからです。こればかりは、自分が子どもと接してみて、判断するしかありません。私は、引き継いで頂く方に、自分が伝える情報は鵜呑みにせず取捨選択して頂くようにお願いをしています。

 引き継ぎを終えた後、しばらく経って後任の方から私に連絡が入りました。子どもと接しているうちに引き継ぎの時に教えてもらったことがようやく理解できたということでした。このようにすぐには分からず、時間をかけてわかってくることもあります。このようなすぐにはわからないような実態が、比較的早い段階で気付けることも引き継ぎの利点だと思います。自慢をする訳ではないのですが、引き継ぎでその子の実態を伝えていなければ、それに気付くためにはもっと時間がかかっていたと思います。このように、引き継ぎは、子どもの実態把握の時間を短縮し、適切な支援を早く開始できることに大きなメリットが存在すると思います。

 今まで、何十回も引き継ぎ、引き継がれてきましたが、そのことを意識できたのが最近のことです。これから引き継ぎ行う方、引き継がれる側の方には、引き継ぎの重要性を理解していただき、子どもへ教育活動がスムーズに始められるようにと願っています。

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