ダラダラしている、やる気がない、不機嫌、学校に行くのを嫌がる、そんな状態は寝不足や怠けのように思うこともあるでしょう。しかし、その原因は、起立性調節障害なのかもしれません。ここでは、誤解されることの多い起立性調節障害について解説したいと思います。
「起立性調節障害」(OD)は、心の病気ではない!
「朝起きられない」「登校しぶり」・・・・・等々
起立性調節障害は、「気のせいだ。」「なまけているだけだ。」と思われ、長い間苦しんでおられる方がたくさんおられます。しかし、起立性調節障害の方の多くは、決して怠け心ではなく、普通に生活することを望んでおられます。
ところで「起立性調節障害」とは、いったいどんな症状なのでしょうか。
「起立性調節障害」(OD)とは?
みなさんは立ちくらみを経験されたことはありませんか、急に立ち上がるとふらっとすることがありますよね。これは、立ち上がることで、脳に流れる血液が一時的に不足するためです。起立性調節障害(Orthostatic Intolerance)は立ちくらみと似ているところがあり、まっすぐに立った状態を保つことが難しい症状で、様々な不快感や調節障害も引き起こす場合があります。
主な症状は、立ち上がった直後にめまい、ふらつき、意識の混濁、息切れ、筋力の低下などが現れることです。これらは、立つことにより血液が滑らかに回らず、脳に酸素や栄養がうまく送ることができないことによって起こるものです。ひどい場合は、失神することもあります。
起立性調節障害といってもその症状の表れ方には、様々なタイプがあります。タイプによっては、気のせいや怠けのように思われてしまうこともあるので、厄介です。ここからは、起立性調節障害の種類と誤解について解説します。
「起立性調節障害」(OD)の種類について
起立性調節障害は、小学校高学年から高校生くらいの年代の子どもに発症しやすいことが知られており、様々なタイプがあります。1番多いのは、一過性の血圧低下による「起立直後性低血圧」ですが、他にも起立中に腹部や下肢に血圧がたまり、交感神経興奮やアドレナリンの過剰分泌によるもの、突然心臓の収縮のタイミングがずれて血圧が低下するものなどがあります。症状や原因は様々ですが、いずれも立ち上がった時もしくは立っている時に起こることが多いです。
それでは、冒頭に述べたように心の病気ではないというのは何故でしょうか。
「やる気の問題は」は誤解!
起立性調節障害は、朝起きることができないのに午後からは比較的元気になることがあります。だから「さぼっている」とか「やる気ないからだ」と思われがちです。
しかし、この症状は自分の意志でコントロールできるものではありません。血管や心臓の動きを調節している自律神経の働きの悪さの現われであり、身体的な問題であり、心因性の病気ではありません。ましてや怠けているわけではないのです。
むしろ心因性は、二次的な症状と言えるでしょう。次のような二次障害が考えられます。
「起立性調節障害」(OD)の二次障害
1,不安障害:身体の不快感や制限される活動によって、不安障害が引き起こされることがあります。
2,抑うつ障害:長期間の慢性的な疲労感や身体的制約によって、気分の落ち込みや希望が見えないことがあります。
3,社会的孤立:体が思うように動かせず、そのことで疲労も大きく、友人や家族との交流や社会的なイベントの参加ができなかったり孤立感や孤独感を生じたりすることがあります。また学校では、1時間目から行くことも難しく、授業を受けない教科もあり、学習が遅れることに対する焦りなどが本人や保護者にもあると考えられます。
4,ストレス:身体的の不調で活動の制限が増えていき、それに伴いストレスが増えていきます。ストレスが引き金になって注意力や集中力の低下、思考の混乱、判断力の欠如などがあらわれることもあります。午後から回復したときに、登校できればよいのですが、人からどう思われるか、気になって、結局欠席するケースも多くいため周囲の理解が必要になります。
5,身体的障害:安静にしすぎることの弊害もあります。
ここまで、起立性調節障害がやる気とかいった心因性のものではなく、自律神経の働きによる身体的な問題であることを解説してきました。では、起立性調節障害とうまく付き合うにはどうすればいいでしょうか。それについては、次の機会にお話したいと思います。
参考文献:
「起立性調節障害(OD) 朝起きられない子どもの病気がわかる本」田中大介監修 講談社
「学校に行けなかった中学生が漫画家になるまで」月本千景 コルクスタジオ
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