前回は、起立性調節障害がやる気などといった心因性のものではなく、自律神経の働きによる身体的な問題であることを解説しました。今回は、起立性調節障害とうまく付き合うにはどうすればいいかを考えていきたいと思います。
起立性調節障害との付き合い方
起立性調節障害は、快方に時間がかかるケースも多いですが、いずれ緩和して、回復していきます。その過程は、次の通りです。
「起立性調節障害」(OD)は、どうやって回復してくのか?
急性期
不調が出始めてから、「起立性調節障害」と診断されるまでです。この間、時間がかかることも多く、病院をめぐることもあるでしょう。本人も家族も苦しい思いを重ねることが多いです。診断後は、本人や家族の辛さを周りの人が少しでも理解し、支えてあげることが大切です。そして本人にとって一番いい方法をみんなで考えていくことです。
低迷期
診断後もすぐに回復とはいかず、長期戦になることが多いです。焦る気持ちもあるとは思いますが、そこは割り切って自分で今できる「時間割」を作り、取り組めるようにした方がよいと思います。学校とも相談することは必要ですが、学校の時間割にこだわらず、例えば、3,4時間目だけ授業を受けるとか午後から登校するとか、保健室に登校するなど本人と学校関係者、家族が本人の意思を尊重しながら話し合っていくことが理想だと思います。
回復期
よくなってきたと思えた時こそ要注意です。オーバーペースにならないように、休み休み進めるように周りの人は声をかけることが大事です。頑張った後は、休むというスタンスで、周りの過剰な期待に応えようとしてしまう場合もあるので注意が必要です。
「起立性調節障害」(OD)のとらえ方、考え方
完治時間がかかる場合が多いために、学校の活動に影響を及ぼします。出口の見えないトンネルにいるような気持になることもあるでしょう。しかし、時間も薬と考えて、全期間が回復に向かうリハビリの過程と考えてみることができれば、本人もご家族も気が少し楽になるのではないでしょうか。
目標をできるものにすることも有効です。まず「身体症状の緩和」と「症状があってもそれに合う生活を送る」という事に絞って考えてみるのもいいのではないかと思います。
それでは、症状が出た時の対処法を述べたいと思います。
「起立性調節障害」(OD)の症状が出た時の対処法
1.立ち上がる時
急に立ち上がると、めまいや頭痛がひどくなるので、30秒くらい時間をかけて立ち上がります。
2.立ちっぱなしの時
立ち続けると転倒する場合もあるので、立ち続けない方がよいですが、難しい時は、頭を下げてうつむきかげんに、両足をクロスさせてすり合わせ、可能なら足踏みやひざの曲げ伸ばしを行うなど予防しましょう。転倒しそうになったら、すぐにしゃがみこんで防ぎましょう。着圧ソックスを履くのも有効な場合があります。
3.座りっぱなしの時
長時間座っていると下半身に血液がかたまりがちになります。椅子に座る時は足台を置いて足底を床より高い位置に給ったり、床に座る時はひざ下にクッションを入れるなど楽な姿勢を見つけたりして工夫しましょう。
最後に周りの人のサポートについて述べます。
「起立性調節障害」(OD)のサポート
子どもが健康に過ごせるように支えていくことは家族にとって大事なことです。しかし、肝心な事は、身体面の心=心臓、精神面の心=メンタルという二つの心のケアだと言われています。
健康的な生活を送るための5つのことを大切にしましょう。それは、「食べること」、「動くこと」、「笑うこと」、「眠ること」、「学ぶこと」です。この学ぶというのは、学校での勉強だけではなく料理や整理整頓など生活上で必要なことが含まれます。
子どもの多くは、思春期にさしかかります。構われすぎるのも抵抗がある場合も多いと思います。親や周りの人は、本人の気持ちもくみ取って、声をかけていく必要があります。
起立性調節障害であることは、確かにデメリットも多いです。しかし見方を変えるとメリットも見えてきます。「学校に行けなかった中学生が漫画家になるまで」(月本千景 株式会社コルクより出版)には、体験者がどう乗り越えてきたかがわかりやすく書かれています。これらの本も活用しながら、周りの人の応援を受けて、乗り越えて欲しいと思います。
参考文献:
「起立性調節障害(OD) 朝起きられない子どもの病気がわかる本」田中大介監修 講談社
「学校に行けなかった中学生が漫画家になるまで」月本千景 コルクスタジオ
コメント