特別支援教育で最も重視すべきものとは?

自己肯定感記事

 特別支援教育は特別支援学校や特別支援学級だけでなく、通常学級においても大切です。それは、特別支援学級に在籍しない支援を必要とする子どもが、通常学級に少なからずいることもそうですが、それ以外に特別支援教育と通常学級の教育が別のものではなく、境目なくつながっているものだからです。

 だからこそ、教育に携わるすべての方々に特別支援教育は避けて通れないものだといえます。そこでこのページでは、特別支援教育を実践するにあたって、最も重視するべきものは何なのかを解説していきたいと思います。

 ただ、これは私が重視しているものであって、先生方や保護者の方の中には異なる考え方もあるはずです。あくまでひとつの考え方として参考にしていただければ嬉しいです。

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特別支援教育で最も重視すべきもの

 まず、結論から申し上げます。特別支援教育で重視すべきものの一つとして挙げられるのは、 「自己肯定感」 です。これは、単なる「自信過剰」とは意味が違います。「自分の存在が人の役に立つ、あるいは周りの人に必要とされている」という認識に裏付けられた「自己肯定感」が必要です。

 特別支援教育向けの出版物というわけではありませんが、文部科学省国立教育政策研究所の生徒指導進路指導センターでは、リーフレットの中で「自己有用感」という言葉を使っています。(詳しくは国立教育政策研究所の生徒指導リーフ「自尊感情」?それとも「自己有用感」?をご覧ください。)

 この「自己有用感」という言葉はとてもよくできた言葉で、ここで言う「自己肯定感」もこの意味で使っています。ですが、ここでは、馴染みの深い「自己肯定感」で話を勧めたいと思います。

 なぜ「自己肯定感」が重要なのかというと、ひとつは「生きる力」を獲得するために必要不可欠であることと、もうひとつは支援を必要とする子が「自己肯定感」を高めにくいことにあります。

生きる力と自己肯定感

 文部科学省によると特別支援教育とを「障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うものである。」としています。

 この中の「幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組」とは、それぞれの障害の状態や特性及び心身の発達の段階等に応じて、主体的に自己の力を可能な限り発揮し、よりよく生きていこうとすること、また社会、経済、文化の活動に参加することができるようにすることを指しています。つまり、「生きる力」を育てるということです。これは特別支援教育に限ったことではなく、学校教育全てに共通する目標です。

 「生きる力」をとは「これからの社会を生き抜く力」と言い換えることができます。これは子ども達が将来仕事をして経済的に自立できることだけではありません。自分の好きな趣味を見つけて生活を豊かにしたり、恋愛をしたり、何か没頭できることをみつけたり、自分の人生を豊かにすることすべてが含まれます。

 よりよく生きるためのこれらのことは、障害を持っていてもいなくても変わりません誰もが幸せに自分の人生をより良く生きる。それが「生きる力」であり、子ども達に育てるべき力です。

 そして、そのためには、最初に述べたように「自己肯定感」が大切になってきます。なぜなら、自分に自信がなかったり、自分のことが嫌いであったら、「生きる力」は到底獲得できません。「自分の事は嫌いだけれど幸せに生きる」というのは矛盾しています。

 ところが、特別に支援の必要な子ども達は、その障害や特性ゆえに「自己肯定感」を高めにくいです。なぜなら、自己肯定感は人の役に立ったり、人に認められたりすることで最も高まるからです。人の手を借りることになったり、代わりに身の回りのことをやってもらったり、場合によっては周りから心無い言葉をかけられることもあるかもしれません。そんな中で「自己肯定感」を高めるのが難しいことは容易に想像できるでしょう。

「自己肯定感」の高めるためには褒めればいいのか

 では、自己肯定感を高めるためにはどうすれば良いのでしょうか。それは、「褒める」ことだと考えてはいませんか。確かに叱って育てるより褒めて育てるほうが、自己肯定感を得やすい気はします。しかし、「褒める」場合、次の2つの点が問題となります。

 ひとつは、褒めるのは主として大人だということです。大人が子どもに自信を持たせようとして褒めるのですが、子ども達の間でこのような事は行われません。「大人は褒めてくれるけど友達はそうでもない。」ということが起こってしまいます。子ども同士のコミュニティーでの評価は自己肯定感の形成に決して小さくない影響を持ちます。大人だけがチヤホヤしてもそれは付け焼刃に過ぎないのではないでしょうか。

 ふたつめは褒めて持たせた自信が根拠のないもので、自信過剰な子どもに育つ危険性があることです。何もできないのに自信だけあっても意味がありません。結局、実際にやってみると失敗続きで、最終的には自信を無くしてしまいます。

自己肯定感を高めるために本当に必要なこと

 われわれ大人は「褒める」ことを安直にやりがちですが、そうではなく、「認める」ことの方が重要です。子どもができたことを「認める」ことで子どもは自信を持ちます。しかし、認めるためには、認められるようなことができるようになったり、そうなるように努力する必要があります。

 ひとつは得意分野を伸ばすことで、周りから認められるというがあります。「昆虫のことは○○君に聞けば、なんでも知っている。」とか「○○君は電車のことにすごく詳しい。」というような場合です。その子に得意な事や興味のあることがあれば、それを伸ばしてあげるのはとても良いことだと思います。そうすることで、人から認めれるようになり自己肯定感が高まります。

 では、好きな事だけをさせて、嫌なことは回避することが自己肯定感を高めるのにいいのでしょうか。例えば、漢字が苦手な子に漢字の練習をさせるのは、できなくて自信を無くし、自己肯定感は低くなりそうな気がします。

 しかし実際はそうでもないのです。なぜなら、その苦手なことをがんばろうとしていたら、その努力をまわりの人は大人、子ども関係なく評価してくれるのではないでしょうか。苦手なこともそれに向きあうことが、結果的に自己肯定感を高めることにつながります。

 ただ、得意なことを伸ばすより、苦手なことを頑張る方がはるかに大変です。ここで、周りのサポートが重要になってきます。苦手なことを小さなステップに分けて取り組むとか、得意なことの間に苦手なことを短時間ずつはさみこんでいくとかの方法が考えられるでしょう。いずれにしても、その子が自信を無くしたり、嫌がったりするポイントのようなものをうまく見極めて、その子の努力が続く範囲で困難を乗り越えさせていくことが必要です。

まとめ

 このページでは、特別支援教育で最も重視すべき「自己肯定感」についてお話してきました。ここでまとめておきたいと思います。

・支援の必要な子ども達は、「自己肯定感」を高めにくいにも関わらず、それは「これからの社会を生き抜く」ために必要不可欠なことである。
・「自己肯定感」を高めるためには、「褒める」より「認める」。そして「認められる」ためには、「得意分野を伸ばすこと」の他に「苦手なことにチャレンジ」ことも含まれる。
・「苦手なことにチャレンジ」させるためには、周りのサポートが大事。

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