今の対応次第でADHDの子どもの未来が決まる

DBDマーチ 記事

 ADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)は、注意欠如・多動性症のことで、不注意と多動性、衝動性を主症状とした症候群です。通常は12歳までにいくつかの症状が認められ、クラスの中にも診断を受けている子が在籍していることも多くなってきました。子どもの頃に、落ち着きがなく、衝動的なため関係機関で検査を受けたところADHDを診断を受ける場合が多いのですが、成人になってはじめて診断されることも増えているようです。

 このページでは、ADHDの子どもに起こりがちなDBDマーチという負の連鎖とそれを断ち切るために子どもの頃にどのような対応が大切かを考えてみたいと思います。

子どもから大人へ成長するに伴なって変わる有病率

まずは、この図をご覧ください。

 この図からわかることは、子どもと大人の有病率の違いです。 小児期の7~10%から、成人になると0.5~4.6%と低下します。 このデータは現時点での子どもと大人の比較で、成長に伴ってどう変化するかのデータではないので絶対的なものではないのですが、子どもから大人に成長するにつれてADHDは減るかもしれないという仮説を立てることはできます。つまり、子どもの頃にADHDと診断されていても、大人になると症状は解消するかもしれないということです。特性は、多少残ったとしても生活を送るうえで支障がなければ、障害ではありません。

 ところで、男女比も子どもと大人では変わっています。男の子が多かった小児期に対し、成人期では男女比に差がなくなっています。

 私たちの周りに目を向けたとき、男の子はじっとしていることがなく、常に動き回って落ち着きがないと感じられることはないでしょうか。しかし、その子たちも大きくなるにつれて、子どもの時のように動き回ることはなくなります。ADHDの特徴のひとつである多動は小児期の男の子の特徴でもあります。

 実際にADHDと診断された子どもたちに関しても、成人するころには多動に関しては解消することがほとんどです。しかし、多動は解消しても、ADHDに対する対応が不適切であったことから、別の障害を引き起こすことも少なくありません。ここからは、ADHDが元で引き起こされる二次障害について考えてみたいと思います。

DBDマーチ

 DBD(Distruptive Behavior Disordern)マーチという言葉があります。ADHD(注意欠如・多動症)からODD(反抗挑戦性障害)そしてCD(行為障害)へと移っていく一連の過程をさします。

  ODD(反抗挑戦性障害 )とは、怒ったり、癇癪をおこしたり、意地悪をしたり、反抗や拒否をすることが多かったりするなどの拒絶的、反抗的、挑戦的な行動をとる障害です。また、CD (行為障害) は、喧嘩やいじめ、脅迫、残忍な行為、強盗など犯罪的な行動をとる障害です。

 これらは、ADHDによくみられる行為ですが、ADHDの障害というわけではありません。ADHDの特性から起こるトラブルに対して、周りが不適切な対応ととることで引き起こされる二次的な障害と考えられています。たとえば、子どもの頃に多動を理由に、大人から何度も叱責されているような場合、意欲の低下や自尊感情の低下が起こることは十分考えられます。さらに、ADHDの特性によって本人にはどうすることもできないことで否定されることに対し、反抗的になるのはある意味当然のことなのかもしれません。

 ADHDに対する周りの対応の不適切さによって、やがてはODDやCDに至る場合が多いと言われています。このADHD→ODD→CDの連鎖がDBDマーチと呼ばれるものです。ADHDは、 注意欠如と多動性の障害であり、それ以上でもそれ以下でもありません。 ODDやCD に進むか進まないかは、ADHDへの対応にかかっています。

DBDマーチ を食い止めるには

 ADHDの特性のうち、 不注意や衝動性は残るものの多動性は成長するにつれて消えていきます。すべての特性がなくならなくても、日常生活を支障なく送れることも多いでしょう。ADHDと診断された場合、そこから先のDBDマーチを食い止めることがなにより重要になってきます。

 そのためには、子ども時代をどれだけ自他ともに肯定的に過ごすかどうかがカギとなります。ADHDの特性で起こる失敗やトラブルに対して、愛情深く接していくことが、その子の未来を切り開いていくことになります。

  それには、家庭・学校・地域で考えていかなければならないでしょう。 家庭は、子どもの基本の生活の場であるところです。じっとしていない我が子を見ながら、ハラハラされると思いますが、その子のいいところに目を向けるようにしていきましょう。また、人と比べないことも大切です。大変かもしれませんが、家庭が安定していればまずは大丈夫です。

 次に学校です。たくさんの子をひとりで担任している状況で多動の子を教えることは大変です。それでも、じっとしていない子にプリントを集めさせたり、黒板を拭かせてたり、じっとしなくていい状況を作り出すなど、できることはいろいろあります。また、制度の問題になるのですぐには解決しないかもしれませんが、副担任制度の導入や通級指導教室の各校配置なども進めていかなければなりません。特に通級に関しては、専門職として採用することも視野に入れていく必要があります。こういった専門家がADHDの児童とかかわっていくことで、的確な教育方針の元、その子の成長を促していけるとおもいます。

 最後に地域人材の活用もうまくできれば大きな力になります。 私自身、多職種連携で、学校のケース会議に医師や心理士の方に参加していただき、ご意見をいただくことがありました。教師だけではわからない子どもの状態や対応について、大変参考になる時間を持てました。

  DBDマーチ を食い止めることができれば、 「昔はやんちゃだったけど、今はいいお父さんになっている。」 と笑いあえる日も夢ではありません。じっとしていない子に家庭でも学校でも気の休まるときはないかもしれません。それでも、子どもの頃にかける言葉や示す態度でその子の未来が明るくなるのか、暗いものになるのかが決まるとしたら、大人も頑張れるのではないでしょうか。

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