TEACCH(ティーチ)プログラム

TEACCH記事

「部屋を片付けなさい。」「はやく宿題をしなさい。」「時間に遅れちゃうわよ。」世の中のお母さんが子どもさんによくいう台詞ですね。実際にマイペースで、なかなか進まないお子さんを見ているとイライラするお母さんの気持ちもわかります。

 でもそのお母さんの言葉、お子さんにうまく届いているのでしょうか。言葉を聞いて、その意味を理解し、行動に移すのは意外に難しいものです。言葉ではなかなか通じないことが課題のお子さんにTEACCHプログラムという方法があるのをご存知でしょうか。

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TEACCHとは?

 TEACCHは、アメリカ・ノースカロライナ州で始められました。「自閉症及びそれに準ずるコミュニケーション課題を抱える子ども向けのケアと教育」と日本語に訳されています。TEACCHで行われるプログラムの特徴は、「構造化」です。「構造化」という言葉は、あまり聞きなれないかもしれませんね。

 自閉症スペクトラム障害(ASD)の方は、自分の周りで起こっているたくさんの出来事が整理できません。相手の嫌味や遠回しの言い方やあいまいな態度などを理解することが難しく、相手に誤解を与えたり、怒らせたりしてしまったりすることもしばしばあり、自分がどうしたらよいか、どう伝えたらよいかわからず、立ち往生してしまいます。そこで「構造化」の登場です。「構造化」によって今、何を優先して行うべきかを明確にできます。

 構造化は、「物理的構造化」「時間の構造化」「コミュニケーションの構造化」「ワークシステムの構造化」に分類できます。

TEACCHの構造化

物理的構造化

 「物理的構造化」は、環境を整理し、不安を取り除きます。活動する場所を「ワークエリア」(作業・勉強の場所)「プレイエリア」(遊ぶ・落ち着くための場所)「トランジションエリア」(個別スケジュールが確認できる場所)「カームダウンエリア」(クールダウンのための場所)の4種類に分けます。これらの場所を決めることで、安心して活動ができるし、見通しをもって動くことができます。

 学校では、クールダウンの小部屋をパーテーションなどで用意することがあります。パニックになった時に、心が落ち着くまでその場所にいることで、再び授業に参加できます。ご家庭でも、その子どもしか入らない部屋を隅に作ってはいかがでしょうか。そこで気持ちを静め、エネルギーを充電できるかもしれません。

時間の構造化

 「時間の構造化」では、課題を順に示します。やるべき課題を本人の得意なもので順に示してあげることで、安心して取り組むことができます。文字が得意な子どもには、文字で課題を示し、絵や写真などが得意な子どもは、イラストや画像を活用します。

 学校では1日の予定や1時間の予定を示すことが多いですが、ご家庭では、朝や夜のルーティン、学校から帰ってやること、などを順に示してあげるとわかりやすいと思います。例えば、トイレに行く うがいをする 朝食を食べる 歯を磨くといった、毎日の学校に行く前のルーティンを示してあげることで、朝の準備がスムーズにできるようになるのではないでしょうか。

 また、予定の最後にご褒美タイム(子どもの好きな事・得意な事)を設定するのも子どもにとって励みになるようです。最後のお楽しみを目標にして、苦手な課題も少し織り交ぜていくことが可能になります。苦手なことをしなくてもいいという考え方もありますが、できないと思っていたことができるようになると大きな自信になります。また将来のことを考えると、できることが増えた方がよいと考えて、苦手なこともスモールステップで取り組んだ方がいいでしょう。

コミュニケーションの構造化

 「コミュニケーションの構造化」は、絵カードなどを使って会話を行います。PECSと言われている絵カードは、とても有名でTEACCHにこだわらず、色々な場所で使われています。相手に伝えたり相手からの話を受け取ったり、声に出さなくても通じることで困り感を減らすことができます。場面緘黙のお子さんも絵カードだと気持ちなどを伝えることができることがあります。

ワークシステムの構造化

 「ワークシステムの構造化」では、作業や手順などを詳しい説明なしで手順書などを写真やイラストなどを示して説明していきます。耳で聞いて理解するのが難しいお子さんに効果があります。また、子ども時代だけではなく、一人暮らしをする際の生活や仕事に活かすこともでき、一生を通じて活用できます。TEACCHプログラムが包括的だと言われている理由でもあります。

 TEACCHも万能ではない

 こう挙げてみると、TEACCHは、うまくいく夢のような方法のように思えます。しかし、TEACCHがすべての方に効果的とは言えません。そして、残念ながら日本では、すべてを構造化できる環境にありません。しかも、構造化されていない環境でも自立してできるようになることが理想です。

 ここで気をつけなければならないことがあります。それは、構造化なしでできることまで手立てを行ってしまうことです。それをすると、自立を阻むことになって、過支援になってしまいます。どんな方法にも言えることですが、適切な時期に適切な場所で活用してはじめて効果が上がります。

 TEACCHは、たくさんの方々を救ってきた実績のある効果的なプログラムです。多くの方がこの方法を深く知って、適切に活用されることで、大きな効果をあげられるように願っています。

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