行動に現れる心のサイン
私たちは普段、相手の感情や心の状態はどんな情報から知る事ができるでしょうか。最も相手の気持ちが良く分かるのは、相手の表情でしょう。嬉しい時や楽しい時は自然と目尻が下がり、口角は上がり、笑みがこぼれます。怒っている時は、目が吊り上がり険しい表情になるでしょう。こういった情報から相手の感情を読み取り、それに合わせた対応を取ることで、社会生活を円滑に送っています。
こうした心の状態を示すサインは、表情だけではありません。例えば、緊張して手が震えたり、トイレが近くなったり、汗ばんだりすることは、多くの人が経験しているでしょう。
子ども達が発するサイン
子ども達ももちろん例外ではありません。嫌なことがあるとお腹が痛くなったり、時には微熱が出ることさえあります。ところで、まばたき、顔をしかめる、口をゆがめる、とがらせる、首をふる、咳払いなどの行動を頻繁に行ういわゆるチック症状は、行動観察していると比較的わかりやすいサインだといえます。このチック症状の原因は、脳に関係している、また心因性のものだとも言われていますが、実際の所はよくわかっていないことが多いようです。すべてではありませんが、私は、緊張したとき、うそをついたとき、苦手なことに向かうときなどに表出ことが多いのではないかと見立てています。
こういったサインがどんな時に見られるのかを注意深く観察していると、子どもの実態がわかってきます。実際、子ども自身も自分の感情に気付かず、心の深い部分での状態が行動に出ている時もありますので、言葉にできない心の状態を把握することにつながります。
サインにはわかりやすいものとわかりにくいものがある
ただ、サインには、わかりやすいものとわかりにくいものがあります。次に挙げているのは、実際に私が経験したケースでわかりにくいサインの実例です。
私が担当することになったAさんは、検査結果や資料も豊富、的確で、私なりの実態把握も行い、課題の検討もスムーズでした。また、Aさんは、出された課題を喜んで行い、担任の先生も保護者の方も協力的でうまくいっていると思っていました。実際に表情も明るく、次々と課題に取り組む姿に効果があると確信していました。
しかし、はじめはそれほど意識しなかったのですが、しばらくするとAさんのある行動が気になり始めました。それは、課題をする前に必ず鉛筆を削るという行為です。十分芯先が削れているにもかかわらず、鉛筆を削る。この行為に気づいたとき、疑念をもちました。もしかしたら、苦手な課題に抵抗している、もしくは苦手な課題に取り組むのを遅らせようとしているサインなのではないか。
この鉛筆削りは、通常の学級でもよく見かける光景です。立ち上がって、鉛筆を削ると、目立ちますが、最近の筆箱には、鉛筆削り器がついているものがあり、それをそっと回しているのです。このAさんのサインがわかってからは、少し課題を進めるのを緩めました。そのまま突っ走っていたら、いずれしんどくなると思ったからです。
このように、子どもは、日々、大小、いろいろなサインを出しています。一つ一つ拾うのは大変なことです、変な癖があるなぁで終わらず、こうしたことをしている原因を探ってみることが改善のヒントになるかもしれません。そういう意味で、いつも子どもたちの行動観察を怠らず、考え、向き合う必要があると感じています。
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